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ニッポン風めぐり紀行

各種旅行記、バイクツーリング、乗りものレポ、老舗旅館や街道探訪など、『旅に生きる日々』を綴るブログです。

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宿泊帳簿80.戸畑 いくよ旅館

小倉競馬開催時の定宿としていた大成旅館が残念ながら廃業となりました。小倉周辺のビジネスホテルは料金がやや高めで、カプセルホテルやゲストハウスもあるにはあるのですが今いち気乗りしません。大成旅館のような昔ながらの駅前旅館はないものかと範囲を広げて探していたところ、小倉から鹿児島本線で3駅の戸畑駅前に「いくよ旅館」があることを知り、早速電話を入れて予約を取っての宿泊となりました。


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立地は戸畑駅の北口からすぐの場所。ただし北口には改札がないため南口から地下道を通らなければならず、徒歩3分といったところでしょうか。駅から若戸渡船へと伸びる目抜き通りの一本裏手の住宅地。ちょうど十字路の交差点の一角に交差点の中心に向かって玄関を構えた堂々たる佇まいのいくよ旅館が姿を現します。玄関上には「国鉄推薦旅館・日本観光旅館連盟 いくよ旅館」という木製看板が掲げられ、圧倒的な存在感を放っています。





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玄関を開けて挨拶をすると60代後半くらいのご主人が暖かく迎えて下さり、二階の一番手前の「松の間」へと通されました。既に冷房が入っていて客室はひんやり涼しく、さらには冷水をいただいたりと細やかな配慮が助かります。客間は日本人形の置かれた床の間に床脇に窓際の広縁という八畳ほどの和室。テレビやコンセントや自己制御可能なエアコンといった必要最低限の設備は整っていて何ら不自由しません。目を引くのは客室内の欄間や硝子引き戸、さらに客室入口部分の庇屋根に丸くくり抜いた砂壁など造作部分が細部にまで凝られており、これはおそらく客をもてなす思いから設計された初代宿主と当時の職人の心が深く反映されているものと推察します。旅館全体のつくりは主に一階部分が宿主の居住区域と風呂、二階に客室と便所と洗面所と洗濯物干場。外観からは想像がつきませんが奥行きがかなり広く、内部構造は迷路のようで複雑奇異な造りになっています。




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ご主人の話によれば、いくよ旅館は築100年近い建物だそうです。北九州工業地帯が繁栄を極めていた頃には戸畑にも多くの労働者が集まって毎晩のように宴会で賑わい、数多くの著名人もこの宿に宿泊したそうです。戸畑駅南口から洞海湾に向かってまっすぐ伸びる目抜通りには「銀座」という地名が残っており、その一角には小料理屋が集まるバラック状の店舗が今なお残されています。その先には若戸渡場があり、対岸の若松とを結ぶ若戸渡船が発着しているのですが、海を渡ってきた労働者が戸畑駅まで歩くこの目抜き通りは北九州工業地帯全盛期はたいそうな賑わいだったのでしょう。今ではその賑わいはすっかり失われていますが、若戸渡船は未だ現役で100円の乗船料で片道3分の船旅を楽しむことができ、私も特に用事はありませんでしたが往復乗船しました。対岸の若松渡場には上野海運や鶴丸海運といった海運会社の事務所が残り、渡場周辺の古めかしい風情は秀逸。一方の戸畑側も斜陽化したとはいえ新日鉄住金や日本水産をはじめとした工場群は健在です。駅の北側の中本町にはあやめ通りという飲食店や食料品を扱う市場が密集するアーケード商店街が残り、薄暗くて澱んだ雰囲気と生臭く人間味のある雰囲気が共存しており、生活感漂う独特の風情がたまりません。一方で戸畑駅前のかつての工場跡地にはイオンが進出しており、あやめ通りとは対照的な圧倒的な集客力が印象的でした。戸畑駅周辺を歩くだけで日本の産業の発展と衰退が手に取るような気がして、その中で北九州の栄枯盛衰を100年にわたり見守ってきたいくよ旅館に一晩世話になることの意義を感じました。



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この日は土曜日でありながら宿泊客は私だけで夜はひっそりと静まり返っていました。築100年の建物も老朽化が進んでおり、複雑で繊細な造りの旅館は維持管理や修復修繕にも大きな負担がかかります。消防やバリアフリーの観点から現代の基準をクリアできない部分もかなりあると思われます。宿主もこの先いつまで続けられるか私にも分からないと仰っていました。一泊素泊りで4,500円というのは良心的な値段で、小倉周辺のビジネスホテルと比べると安価です。ただそれ以上にこれほどまでの歴史ある駅前旅館は全国探してもそう多くはなく、いくよ旅館に宿泊すること自体に価値があるともいえます。小倉の大成旅館が廃業となった今、次なる定宿はこの「いくよ旅館」になるかもしれません。


<2018.8.4> 一泊素泊4,500円(電話予約)

■いくよ旅館
福岡県北九州市戸畑区南鳥旗町7-3(戸畑駅北口徒歩2分)
093-871-2194
特記事項:築100年の駅前旅館、若戸渡船、アーケード街、駅前にイオン
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